こんにちは、サヲトメです。
WEBメディア【ご当地サウナ委員会】で、私が執筆した錦糸町ニューウイングの取材記事が公開されました。
インタビューで、吉田支配人にお話を伺ったお話があまりにも面白く、一社会人としても参考になることばかりでかなり衝撃的だったのです。
しかしながら、文字数制限のある記事にすべてを折り込むのは不可能。
私だけにとどめておくのは勿体ない!是非サウナ好きの皆さんにもシェアしたいので、ご当地サウナ委員会番外編としてこちらにつづります。
全2時間のロングインタビュー、余すところなお届けいたします!
もくじ
全てを変えたあの日、ニューウイングは
サヲトメ
僕が支配人になる前の段階で、ニューウイング(以下NW)は潰れかけてたんだよね。つぶれる理由も見えてたし。
だから自分が支配人になったから、これは違うと思ってた部分を違わないようにしていった感じかな。
サヲトメ
いくつかの要因があるとおもう。
あの時は東日本大震災の後だったから、お客さんがサウナにお金を使う時代ではなくなった。
常連さんは職を失い、職のある建築業は東北へ行った。普通のサラリーマンは、家族を大切にすることを決心した、人生を本気で考えてた時代だったよね。
そんな時代に、お金をどこに使うのかっていうと、自分が欲しかったものを高くても買おうとか、家族の為につかうとか、それがあの時期にはすごく大事なことだった。
そう考えると、自分のための娯楽であるサウナは一番必要のないものだった。すべてが自分のためのもの。一番切るべきところじゃないかな。
サヲトメ
そういう時代背景である一方で、NWのなかではどんどん縮小化していった。このサービスをやめる、このサービスを節約する、なくす作業をしていった。
お客さんが入らないから全体的に縮小していって、結果サービスが悪くなる。つぶれるお店のパターンだよね。
お客さんがこない。お金が入ってこない。少ないお金で経営を回す、サービスが縮小して、お客さんが来なくなる…負のループに入ってるからこのお店はつぶれるなって思ってた。
サヲトメ
あの時期ってみんな生きることを本気で考えてたよね。
東北の被害とは比べ物にならないけど、東京にも被害があって、日常を変える大きな出来事だった。仕事をやめないまでも、皆それなりのストレスを受けていた。
そのストレスをどうしようって考えて、隠れてサウナに通っていた人がいるんだ。逃げ場としてサウナを使ってた人が。
サウナに通ってるなんておおっぴらには言えなかった。
逃げ場所としてのサウナを使っていた人たちが、その時自分を救ってくれたと思っている人がその時期に沢山生まれた。
そういう人たちが、間違いなく今のサウナブームを作っているんだよね。
回復の兆しと、新たな希望
サヲトメ
2012~2013は暗黒期だったから、2014年くらいかな?
縮小していったもの、いいものを戻していく作業をした。あったほうが良かったサービスを元に戻したんだ。
サヲトメ
確かにサービスを戻したからってすぐにお客さんが戻るわけではない。
でも僕からしてみれば、一番リスクのないことをやったとおもう。やったところでお客さんが来ないのって、別にノーダメージなんだよね。
やってみて人が入ればよかったね、だし
来なくても元々入っていないから、色々できるんだよ。
ただでさえいないんだから、変えたっていいじゃんっていう感覚。
サヲトメ
お金がかからないところからやっていけばいい。変えたところでリスクは一番低いんだよね。
一個づつやってみて、ウケたから採用、これはウケなかったからやめる、っていう作業の積み重ね。
震災の時と比較するとダメージは少なかったんでしょうか?
サヲトメ
そうだね、震災こそ死線を越えてきたって感じ。
なんでかっていうと、震災のころは、母数としてサウナ好きがいないんだよ。サウナ好きがいない状態を増やす作業っていうのが、凄く地道で大変。
コロナはサウナ好きがいるのが分かってるから、なんかしらのチャンスがあれば、落ち着けばお客さんが戻ってくるっていうのが分かってるから、全然気が楽だね。
あの頃はひとりひとりサウナ好きになってもらうことが必要だった。今は世の中が変わった時に、うちに来させるアイディアがあれば来てもらえるじゃない。前は集客する以前に客がいなかったから。
サヲトメ
2パターンで進行してるね。
ウチの当時の常連さんっていうのは年を取ってるから、病気になったり亡くなった、つかまったり(笑)がパターンだった。
だからこれはゼッタイ10年後には今の常連さんがいなくなるって思ってた。
NWがつづいてたとしても10年後には潰れるなって思ってた。
サヲトメ
それとは別パターンで、人を増やしていかなきゃいけないなって思って、そのために必要なことは何か考えた。
「昭和から続く成功パターン」っていうのがあるんだけど、適温・清潔・快適。シンプルな3要素を押さえておく。これが温浴施設の昭和から続く成功パターン。これが7割。
残りの3割は時代背景にもともなう不確実性の部分。これを平成にかえていかなきゃいけない。
サヲトメ
例えば広告。駅の広告やタクシーの車内広告、新聞。
不特定多数へのPRって効率わるいよね。それじゃだめだなって思って。「確定したサウナ好きにメッセージを送る」確定多数って言ってるんだけど。
そこにメッセージを送るように変えたほうがイイって言ったけど、当時はわかってもらえなかった。
年間ウン百万の駅の広告や、数十万の新聞広告、興味ない人はみないじゃない。
サウナ好きに直接的にメッセージを送れることがないかって思った時に、時代がSNSになりかけてた時だったんだよね。
Facebookとか、LINEの出たてだよね、震災のころって。
でも確定したサウナ好きを、どうやってSNSで探すのかが分からなかったから、わからないうちは手をだせなくて、どうしようかなって思ってた。
サヲトメ
そうしてるころに、うちにヨモギ―さん(@yomogida)が来たんだよね、「NWでサウナのイベントやりたい」って。
最初はアホなこと言ってるなって思ったんだけど(笑) サウナイベントって今じゃ当たり前だけど。当時は殆どなかったんだよ。
サヲトメ
サウナへの恩返し・サウナ新時代の幕開け
最初はヨモギ―さんがサウナの事を喋って、それを見に来る人たち、みたいなイベントだったんだけど。
途中からサウナでイベントやりますってだけで人が集まるようになってきて。
施設の人とオンラインでつなげて話すとか。お客さんが企画をたてて、こうしたほうがおもしろいよねって話する。
サウナでこういうことをやりたいんですけど、っていう提案が面白いなっておもったから、場所を貸すって感じかな。
企画が鋭くて、天才だなって思ったんだよね。職業とかもしらない人たちなんだけど、本当に天才としか思えなかった。
その人たちが今のサウナブームを作ったと思う。
…おっしゃる通り、凄いメンバーですね!
サヲトメ
その人たちの活躍を目の当たりにして、施設とは何かっていうのを考えるようになった。
施設サウナとは何か、「安定」だと思った。
サヲトメ
そう。いつ来てもここが気持ちいいなって思うところに設定を安定させるの。
サヲトメ
凄い回数確かめてるよ。
実際サウナに入ったり、数字見たりして。お客さん沢山入ってるな、と思ったら気になっちゃう。
サヲトメ
同じボナサウナでも形が違えば、空気の入り方も違うから、セッティングも全然変わってくるんだよね。
レディースデーについて
サヲトメ
サウナで、女性にもサウナ好きがいるって話があったの。だから次回のサミットで、女性も呼んでみようって話になって募集したら、二人来たの。
二人きて、あ!ほんとにいるんだっておもって(笑)
疑ってたの。来るはずがないじゃんって思ってたから。
これがちょっとした希望だったの。新しい扉が開いたなっていうか。
サヲトメ
女性の言葉って男性を惹きつける力があるんだよね。女性の口コミを増やしたかったっていうのがテーマかな。
サヲトメ
そう。ブームを作るなら女性から、っていうのは昔から言われてたことなんじゃないかな。
更に言えば、女性って推しを応援したい気持ちが強いじゃない。だから推し施設になりたいなって思ったのが始まり。
サヲトメ
その質問もよくされるんだけどね。
赤字にならず、且つ混雑しすぎないラインに設定してるから大丈夫だよ。安心して利用して欲しい。
最近レディースデーをする施設が増えてきたけど、NWがレディースデーを継続してきたから、口コミとか赤字にならないっていう効果が見えてき始めたのもあるかもしれないね。
サヲトメ
そもそもレディースデーをなんでやってるのかっていうのはね。一番はレディースサウナを変えたいんだよね。
世の中にそういうサウナがあれば、レディースデーをやらなくてもいいじゃない。
女性のサウナ好きが何を求めてるのかっていうのを、NWのレディースデーを通じて知ってもらう機会になればいいなと思ってる。
新サウナ・からからジールについて
サヲトメ
スタートは土日の入場制限緩和が目的。
あれはロッカーがないから制限してるわけじゃない。浴室にはいりきらないから制限してるんだよね。
入館者数が50人いたとして、50人浴室いたらもう入れられないから入場制限しないといけない。凄くもったいない動きなの。
サウナに入れない人もいる、立って待ってる人もいる。混雑緩和が最初の目的だったの。
サヲトメ
そう。そこからもう一個サウナを作ろうってなって、サウナ作るなら今調子の悪いアカスリの場所が広すぎるね、って。
アカスリやらない時代なんだよね今。新規のお客さんは若いし、アカスリ未経験だから怖いし、高いの。
知らない事なのに6000円くらいするから、失敗したら痛いでしょ。気軽に出せないんだよ。
サヲトメ
なんでやらないの?って一度聞いたことがあるんだけど、そしたら「どうやって予約するんですか」って。
「アカスリやりたいんですけど」って人に聞くってことは、勇気が要る事なんだよね。
しかも前のアカスリスペースはサウナの近くにあるから人目に付きやすくて、お試しでやるにもちょっと恥ずかしい。
だから今の位置に移動したの。
サヲトメ
そう。ひっそりとした、入ったらすぐにアカスリスペースってわかるところに変えた。
ここで予約するんだって一目でわかるし、湯舟に浸かりながら見てないふりして金額チェックできるでしょ。
でね、あそこにかえたらアカスリの売り上げがめちゃくちゃあがったの。若い人がやりはじめた。
こっそり感がいいんだろうね。体験版としては誰も見られてないところでってのがいいんだろうね。狙い通りだけど(笑)
サヲトメ
で、元のアカスリスペース。この広さあったらサウナつくれるなってなって。動線もいいし。
どんなサウナ作る?ってのが一番難しかった。意外と満足してたかあら、あの二つで。
失敗してバランスが悪くなったら両方崩れちゃう。
だから三つで一つみたいなサウナにしないとダメなんだよねって思ってて。
確か友達に言われたのかな?もう一個つくるっていったら、じゃカラカラだなって言われたの。
それで3つの熱を手に入れられるよ、NWはって。確かに銭湯の遠赤のカラカラめちゃいいよねって。カラカラだなあって思ったのよそれで。
サヲトメ
今のサウナブームって、湿度ブームなんだよね。だけどカラカラ好きも絶対いるし、カラカラサウナだからこその良さもあるじゃない。
今回はちゃんとサウナを作ろうという事で、こういう熱が欲しいっていう考え方から、どうすればその熱になるかっていうのを逆算して部屋の形を決めようって。
費用もかかるので、失敗した場合には熱波やアウフ、ロウリュサービスもできるような逃げ道として、水かけても大丈夫なヒーターがイイ。
だったらikiかね?ってMETOSの担当営業さんにきいたら、ikiよりジールのほうが熱のパワー有りますよって。
ジールの熱をうまく部屋に回したほうが、たぶん吉田さんにあってる。って。じゃあ気になってたしジールにしようってことがヒーターが決まった。
サヲトメ
15名くらいが入るくらいの形にして、ジールの熱をフルに生かす感じの部屋づくりを考えましょうと。
METOSの担当さんとも付き合い長くてね。担当さんはサウナオタクだからMETOSに転職した人なの。
サウナサミットに来てた頃は他の仕事してたんだけど、あまりにもサウナが好きでMETOSに転職して。そこから3年くらいでうちの担当になった人なんだよね。
NWのサウナをゼロから作れるのは凄く嬉しい。NWはあったものにアイディアを加えて今の形になってるけど、今回はゼロから作れるって嬉しくないすか!?って言ってくれて。
サヲトメ
ただただヒーターの熱が強いだけのサウナにはしたくないから、扉が開いても熱が下がらないような感じにしたいし、息苦しくならないようにしたいし、熱も強力でありたいっていうのを凄く考えて。
あのジールサウナの一番の特徴は吸気と換気の場所。右のベンチの下に吸気、排気が左のベンチの上にあるの。
底上げした部分に空気の通り道を作ったんだ。
右下から空気が入ってきてジールヒーターを通って換気されるようにしたんだよ。
ベンチの下に入ってるライトの光が、座席の隙間から抜けてるでしょ。それは空気をジールを通って上にあげてるためなの。
サヲトメ
あとは扉を開けたとき。
入り口正面階段になってるでしょ?階段も空気口になってる。
入り口からそっからまっすぐジールに空気が入って、ジールをとおって温度が上がるの。
人が入ってきても温度が下がったとは思わない感じ。冷たい空気が絶対ヒーターを通るから、温まって空気中を漂うようになってるんだよ。
右奥の王様席は?
サヲトメ
アレは単純に遊び。
アカスリコーナー時代は倉庫だった部分。潰しても良かったんだけど、もったいないよねって話になって。
そこだけ個室みたいになる感じは、たぶんニューウイングだったら許されるってMETOSの担当さんが言ってくれて(笑)
他のところだと危険だとかいう声が上がるかもしれないけど、ニューウイングだからこそ許される、世界観みたいなのが彼に伝わってたんだよね。
だったら一番高いところにつくろうぜ、王の席みたいにしようぜって。
サヲトメ
からからジールは、METOSの担当さんと喋っててできたサウナ。
彼の担知見もあるし、僕がこうしたいっていうのもはっきりしていた。僕の言葉をすんなり理解して、法律上できないことを整理してアレになったって感じだね。
吉田支配人の思慮深さと仕掛けられた罠
その中でも、吉田支配人が仕掛ける罠のお話が凄く興味深くて!
サヲトメ
サヲトメ
自分じゃ罠って思ってないんだけど(笑)
…外気浴スペースを残したこともそうかな?
ジャグジーの奥に扉あるでしょ。お風呂の奥。あそこは元々全開にできる扉だった。
開けてることの気持ちよさもわかるし、全開にあけてることで外から見られたり、閉め忘れて危険も伴うっていうのが管理者としては気になってた。
だからマンションの内ドアについてるようなロックバーをつけて、ホントは閉めるべき場所だけど、ここまでならあけていいよっていうメッセージではあるかな。
サヲトメ
そうかもしれない。
フェイスタオルを積んだ束が4つあるとするじゃない。それを、お客さんはどこをとるかっていうのを見る。
大体左から2個めをとるんだ。端っこじゃないんだよ。それを見ながら、きっと人間の核心に迫ることがあるんだろうなって考える。
試に段差をつけてみたりするんだよ。最初から一番端の束が減ってるふうにしたらどうするんだろうって。
そうすると不思議なもんで、いつも取られる左から二番目からは取らないんだよね。
そういう人間の心理を利用して、動線をかんがえる。
こうしたら人はこう動く、っていうのを考えるとやりやすいし、狭いスペースをうまく使えるんだよね。
サヲトメ
例えば仕事中に、「そこにいられるとちょっと邪魔だな」って思うことがあったとする。
そこから、「このスペースにいつも人が立ってるのはなんでだろう」って、そこに人がいる理由を考える。
5階の部屋がどうして利用されないんだろう、っていうのにつながるんだよね。
水を置いたら人が集まるってどういうことですか?
サヲトメ
男性って意外と薬を飲むの。風邪薬とかサプリとか。
自分のタイミングでそういうことをしたいから、自分の好きなくつろげる場所には水があったほうがイイと思ったんだよね。
結果それで5階の利用者も増えたから、水の需要があったってことだよね。
吉田支配人が思うニューウイングの魅力
サヲトメ
冷水プールかな。
冷水プールがあることによって3つサウナつくれるんだよ。男性5~6人はいっても待ち時間もないし。
冷水プールが無かったら、水風呂が混んじゃうからね。
サウナが3つに増えたことで、より自分好みの入り方を追求できるようになりましたよね!
サヲトメ
サウナに入る時は自分の感覚に向かってほしい。
自分のベストとか自分の組み合わせとか、そういうのを考えながら入るのが、サウナ最大の遊びだと思うから。
いろんなパターンができるようにしておきたいね。
サヲトメ
すっげぇ、そんなことも聞くんだね(笑)
テレビの木の枠の横についてるよ。うちでは12時間で香りが消えるから、3ついれて毎日12時間ごとに替えてる。
人の出入りが多くて、においが低いなって時は、入り口近くに温度計用の箱があるんだけど、そこに追加で1つ置く。
入り口で最初に香りがしたら満足するから、中であんまり香りがしてなくてもいいのよ。最初に感じたら、「あ、今日もいつもどおりだな」って思うじゃん。
人類はすべて吉田支配人の手のひらで転がされている気さえしてきました!
サヲトメ
レディースデー終了直後でお疲れのところ、貴重なお時間を頂き本当にありがとうございました。
吉田支配人の言葉はどれも重く、深みがありながら、時折のぞく少年のようないたずらっぽさが感じられ、ニューウイングの雰囲気が吉田支配人そのものなんだと感銘を受けました。
仕事に対する真摯な姿勢と愛情、思慮深さや楽しむ気持ち。
どれも今の私には欠けているものばかりで、雷に打たれたような衝撃のインタビューでした。
吉田支配人の在り方が、現代に無くてはならないものだと感じたので、ここで皆様に共有できればと思った所存です。
吉田支配人、本当に有難うございました!